人間の心理に関する小話を一つ。
映画館で映画を観ていると、急に煙が立ち込め、チラチラと火の手が上がり始めました。誰かの「火事だ!」と叫ぶ声が聞こえ、女性の悲鳴が鳴り響きます。多くの人がパニック状態になり、とにかく外に出ようと出口に押しかけました。みんな必死で扉を開けようとしますが、扉は一向に開きません。
迫り来る煙と炎。
飛び交う怒号。
そして、開かない扉。
ますます冷静さを失い、力まかせに扉をひたすら押し続けますが、どうやっても扉は開かず・・・。
勘のいい方はもうお気づきですね。
そう、扉は引いて開けるタイプだったのです。
このエピソードは様々なことを考えさせられます。なぜみんな「ドアは押して開ける」という考えに縛られてしまったのでしょうか。よく「押してダメなら引いてみろ」なんて言いますが・・・。
どうやら多くの人は強いストレス状況に置かれると、一つの考え方、一つの対処法しか思いつかないようです。
前回まで、認知療法・認知行動療法シリーズとして、不適切な思い込みや偏った考え方を紹介してきました(①、②、③、④、⑤)。気持ちに余裕がなくなると、自分に馴染みのある考え方に固定されてしまい、その他の考え方ができなくなります。そうなると、現実を客観的に判断することが難しくなります。そして、先の映画館の例のように、そのたった一つの考え方で上手くいかないと、ますます焦りや不安が強くなり、余計に他の考え方ができなくなる・・・という悪循環に陥ってしまいます。
自分に馴染みがあるだけに、自分ではその考え方の偏りに気付くことはなかなかできません。こんな時は、一度、冷静に現実を判断するために休息を取ったり、他の考え方や解決策がないか、誰かと一緒に考えてみることをお勧めします。
ちなみに今では、多くの映画館や劇場の扉は、内側から押して開けるタイプが採用されているそうですよ。
by 押しても引いてもダメ・・・と自動ドアの前で焦ったことがあるカウンセラー
カウンセリングルーム虹